地震保険の【免責事由】と、避難中の【窃盗被害】

今回は、以下のような

  • 地震保険における【免責事由】にはどんなものがあるのか?
  • 地震による避難中に、自宅に泥棒が入り、家が荒らされた場合に、火災保険や地震保険でどのように対応してもらえるのか?

をテーマに解説させて頂きます。

地震保険の免責事由はどんなケース?

保険契約者等の故意、もしくは重大な過失、保険の対象の紛失又は盗難、戦争、外国の武力行使等、核燃料物質等の放射性、爆発性その他の有害な特性、又はこれらの特性による事故、地震等が発生した日の翌日から起算して、10日を経過した後に生じた損害は免責になります。

つまり、上記の地震を含む事故が発生した翌日からカウントして、10日経った後に起きた事故(窃盗は含まない)は、保険会社は免責になりますよという意味です。

しかし、盗難に関しては、経過日数に関係なく免責になります。

免責事由を詳しく解説

地震保険約款3条1項では、次の免責事由が列挙されています。

  1. 保険契約者、被保険者またはこれらの昔の法定代理人の故意もしくは重大な過失または法令違反
  2. ①に規定する者以外の者が、保険金の全部または一部を受け取るべき場合においては、その者またはその者の法定代理人の故意もしくは重大な過失または法令違反。
    ただし、他の者が受け取るべき金額については除きます。
  3. 保険の対象の紛失または盗難
  4. 戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変または暴動
  5. 核燃料物質もしくは核燃料物質によって汚染された物の放射性、爆発性その他の有害な特性またはこれらの特性による事故

これらは基本的に火災保険と同じ内容になっています。

上記③の保険の対象の紛失又は盗難の詳細は、「火災保険では【盗難】が補償対象になるんです!」を参考にして頂ければと思いますが、地震後の混乱状態においては、保険の対象の紛失又は盗難(いわゆる火事場泥棒)の危険が高く、さらに損害確認が現実的に難しくなる(窃盗犯が見つかる可能性が低い)ことから、このような火事場泥棒の被害の場合、保険会社側は地震保険においては免責になることが決まっています。

次の項目では、実際に地震で避難中に、泥棒に自宅の中を荒らされた場合について、詳しく解説します。

地震で避難中に自宅に泥棒が入ったら、それも免責になる?

まず、この質問に対して結論から申し上げると、地震保険の場合は免責になります。

盗難を保険事故とする火災保険は、地震発生から間もない時期の盗難は免責になりますが、数ヶ月経過した時の盗難は補償対象になる可能性があります。

詳しく解説

盗難を保険事故とする火災総合保険に、地震保険を付帯している事例を想定して考えてみましょう。

まず、火災保険の約款上、地震もしくは噴火又はこれらによる津波によって生じた損害は免責になります。

地震による空き家への火事場泥棒については、「地震→空き家→火事場泥棒」という流れで、地震との間に事実的因果関係があることは完全に否定できません。

しかし、この因果関係に相当性があるかはいまだに議論の余地があります。

参考になる判例として、神戸地裁の平成10年2月24日の判決です。

この判例の事件は、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の「平成7年1月20日から21日にかけて、何者かが、本件店舗入り口のシャッターをこじ開け、ショーケースや入り口ドアのガラスを割って侵入し、別紙物品目録記録の商品を窃取するという盗難事件が発生した」ことを保険事故とする盗難保険金の請求訴訟でした。

この契約には、盗難保険普通保険約款が適用されるのですが、この約款の第4条4項によれば、「被告(保険会社側)は、地震・噴火・風災・水災・雪害その他の天災の際における盗難による損害については、これをてん補する責に任じない(要するに補償対象外)とされている」ので、その適否(適用されるかどうか)が争点となりました。

判決の趣旨は、以下の様な事が裁判官から示されました。

一般に、盗難保険契約においては、本件のような地震免責条項が設けられ、保険者(保険会社側)は、地震の際の盗難による損害については、これをてん補する責に任じないとされている。

なぜなら、ひとたび大地震が発生すると、社会秩序の混乱により盗難が多発し、その損害額が膨大なものになると予測されるところ、これを保険者において「てん補」するとなると、保険料が高額となり、かえって保険契約者の合理的意思に反するとともに、保険集団を形成することが不可能になり、保険制度として成り立たなくなってしまうからである。

したがって、盗難保険契約においては、通常の危険状態を前提として保険料率が定められており、地震のような異常危険の下で発生した盗難による損害については、そもそも保険料率の算定に当たって計算の基礎とされていないというべきである。

このような地震免責条項の趣旨及び保険料率の算定方法に鑑みれば、本件免責条項の適用のある盗難とは、保険事故の発生率を高める危険状態の下で発生した盗難を意味するものと解釈するのが相当である。

ただ、本件免責条項を前述のように解釈したとしても、単に通常の危険状態から少しでも危険が高まれば足りるとするのは相当ではない。

前述の危険状態の具体的内容としては、地震の規模、周辺地域の被害状況、治安状態、当該盗難の発生時期、発生場所、防犯設備の破壊の程度、防犯監視体制の有無といった諸要素を総合的に勘案したうえで、著しい社会秩序の混乱及び治安の悪化が認められることが必要であると解釈すべきである。

地震発生から時間が経過すれば、社会は平静を取り戻し、防犯設備や防犯監視体制が復旧し、治安状態も改善するのが通常であることから、地震と盗難との時間的接着性は、前述の危険状態の発生を判断するにあたって、重要な意味を持つというべきである

上記の様な判決が下されました。

つまり、「地震発生から盗難が発生したまでの時間の間隔が、短ければ短いほど火災保険においても免責になる可能性が高くなる」と法的には解釈すべきだと言っています。

上記の判例を参考にすると、火災保険においても、地震直後の混乱状況であれば、地震との間の相当因果関係が認められて免責になり、地震の発生から数ヶ月経過している場合は、地震との因果関係は薄くなるので、いずれかの時期に「相当性」が消滅し、保険金の支払責任が発生すると解釈できるわけです。

ちなみに、地震保険では、保険の対象の紛失や盗難は免責になります。

まとめ

今回のまとめは以下のとおりです。

  • 地震が発生し、避難中に自宅に泥棒が入った場合、地震保険においては保険会社側は免責になる
  • 地震発生後の窃盗被害は、火災保険においては補償対象になりえるが、地震発生から盗難までの時間的間隔が短ければ短いほど免責になる可能性が高くなってしまう。
  • 地震保険や火災保険において、両方とも「火事場泥棒」の場合は、保険金が支払われる可能性が低くなる

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