火災保険と地震保険の関係性

今回は、火災保険と地震保険とは、そもそもどんな関係性にあるのか?をテーマに解説させて頂きます。

地震や噴火・津波は火災保険では免責になる

火災保険と地震保険は、保険事故に違いがあります。

地震保険は保険事故を「地震もしくは噴火又はこれらによる津波(以下「地震等」と表現)」とし、火災保険は地震等による損害を免責としています。

損害保険料率算出機構の「火災保険標準約款」の3条(2)には、以下の様な規定あります。

当会社は、次のいずれかに該当する事由によって生じた損害(注1)に対しては、保険金を支払いません。

  1. (略)
  2. 地震もしくは噴火またはこれらによる津波
  3. (略)

(注1)1.から3.までの事由によって発生した前条の事故が延焼または拡大して生じた損害、および発生原因がいかなる場合でも同条の事故がこれらの事由によって延焼または拡大して生じた損害を含みます。

上記の2.の条項を地震免責条項といい、注1.の損害を随伴損害といいます。

つまり、地震や噴火、津波などが原因で自宅が延焼したりしても、火災保険金は支払われないことになっています。

なお、例えば、東京海上日動火災保険の約款では、地震等に伴う秩序の混乱も随伴損害として免責が規定されています。

地震による火災については、免責事由を3つの類型に分かれていることがあります。

  • 第1類型:地震等によって生じた火元の火災が保険の目的に与えた損害
  • 第2類型:地震等によって発生した火災が類焼又は拡大して保険の目的に与えた損害
  • 第3類型:発生原因の理由を問わず火災が地震等によって延焼又は拡大して保険の目的に与えた損害

地震免責条項については、大地震が起きる度に、その適用の当否が争われてきました。

  • 「地震」は軽微な地震も含むのか?
  • それとも大地震に限られるのか?

上記が常に問われていますが、自然現象としての「地震」であれば要件を満たし、その規模の大小は問わないと解釈するのが通説になっていて、過去の判例でもそうなっています。

次に、「地震によって生じた」の意義は、相当因果関係と解釈されているので、第1・2類型免責では、地震等と火災との間に、第3類型免責では地震等と延焼又は拡大との間に相当因果関係があれば免責ということになっています。

相当因果関係の判断の問題点

もっとも、相当因果関係の判断については問題も多いとされています。

まず、地震によってストーブ等が転倒して燃え広がり、当該家屋に火災が生じた場合は、当該家屋の火災保険は、当然免責になります。(上記の第1類型の免責事由に該当)

次に、その火災が延焼して隣家が焼損した場合も、当該隣家の火災保険は免責となります。(上記の第2類型の免責事由に該当)

数キロメートル離れた遠隔地の家屋にまで延焼した場合はどうかといえば、地震による火災が延焼して当該家屋が焼損したという関係があれば、相当因果関係を認めて免責になります。

難しいのは、第3類型免責のことです。

地震とは無関係に火災が生じ、地震とは関係無く全焼し、又は消火した場合は、当然ですが、第3類型免責は成立しません

地震によって消火困難だったために延焼したという事案の場合は、第3類型免責が成立しそうに思えますが、阪神大震災に関する大阪高裁の判例では、一部免責しか認められていません。

この高裁の判示は、

「第一審被告らは、当審においても、免責はその火災による損害の全部に認めるか認めないかであり、その火災の一部の損害についてのみ免責を認めることはあり得ない(オールオアナッシング論)、オールかナッシングかは、地震がその延焼拡大による全焼に火元火災と地震とのいずれが決定的な影響を与えたかどうかで定めるべきである。」と主張する。

前記のとおり、保険約款の解釈は、文言中心になすべきところ、「地震によって延焼又は拡大して保険の目的に与えた損害」という表現からすると、免責されるのは火災による損害ではなく、地震により延焼又は拡大した部分の損害に限られることは明らかである。

保険約款は、免責される要件を定めると共に、免責される損害範囲も定めている。

第1審被告らの解釈は、保険約款の規定を無視したもので到底採用できない。

しかも、第1審被告らのような解釈では、地震に関係のない火災損害まで免責されることになり、不相当であるし、第1審被告らの主張する基準の「決定的な影響」は、当該裁判所の指摘にも関わらず具体的に明確になっていない

と裁判官が判断しています。

つまり、

「本件地震により拡大した損害は、後記認定の全損害の5割程度であると認めるのが相当である。
右の割合については、事柄の性質上証拠に乏しく、ある程度おおまかな認定とならざるを得ないが、前記の主張・立証責任の分配を踏まえて、裁判所が認定できた事実を前提に可能な範囲で認定するほかなく、これが許されないと解釈することはできない。」

として部分免責しか認められませんでした。

ただし、当該判例については批判も多いです。

結論

今回は、裁判の判例を引用したので、話が分かりづらかったかもしれませんが、結論を簡単に申し上げると、火災保険では地震等による損害は免責となり、地震等を保険事故とする損害保険金は【地震保険】によって担保されることになります。

火災保険では賄いきれない損害部分を、地震保険がカバーしてくれる関係性ということです。

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