【損害防止義務】の意義

損害防止義務】の意義とは何か?また、【損害防止義務違反による免責】について解説させて頂きます。

被保険者の行動によっては、火災保険金が支払われない可能性もあるので、どのような場合に保険金が出ないのか?を知って頂きたく、この記事を執筆しました。

是非参考にして頂きたいと思います。

今回の事例のあらすじ

今回は、「火災事故後に現場保存のためにバリケード設置工事の費用を保険会社に請求できるかどうか?」というお話をご紹介します。

まずは今回の「あらすじ」からご紹介します。

私は、自分で所有する地下1階地上4階建ての建物について、保険会社との間で、住宅総合保険(火災保険)契約を締結していた。

この保険契約には、火災事故等が生じた場合、保険契約者等は、損害の発生の防止又は軽減に努めなければならず、また、保険契約者等がそのために必要又は有益な費用を支出した場合、保険会社が当該費用を負担する旨の損害防止費用についての規定がある。

そして、損害防止費用の具体例として、

  1. 消火活動のために費消(金銭や物品などを使い果たすこと)した消火薬剤等の再取得費用
  2. 消火活動に使用したことにより損傷した物(消火活動に従事した者の着用物を含む)の修理費用又は再取得費用
  3. 消火活動のために緊急に投入された人員又は機材にかかわる費用(人身事故に関する費用、損害賠償に関する費用又は謝礼に属するものを除く)

上記が挙げられている。

本件建物は火災により全焼したところ、私は火災発生後、現場保存のために通風バリケードの加工工事を行い、61,005円を支出した。

私は保険会社に対して、本件保険契約に基づき、この工事費用61,005円を請求出来るのか。

今回の事例の結論として、上記の様な工事費用は、【損害防止費用】とは認められないので、保険会社に請求しても、支払ってくれません。

今回の事例の解説

損害防止義務(保険法13条)の意義について

保険法の13条には、「保険契約者及び被保険者は、保険事故が発生したことを知ったときは、これによる損害の発生及び拡大の防止に努めなければならない」と規定されています。

損害保険契約では、保険事故により生じる損害を保険者がてん補しますが、保険事故が発生しても損害の発生を防止したり、これを最小限に食い止める措置をとることが可能な場合があり、この様な措置を行う主体は被保険者が最も現実的であることから、この様な規定があります。

つまり、被保険者は、「保険事故をただ何もせずにボーッと眺めていないで、損害の拡大を防ぐ【努力義務】があるんですよ。」というルールが法律に書かれているわけです。

損害防止義務という法的義務まで高められている理由としては、保険者の負う保険給付義務は損害が拡大するにつれて増加しますが、損害の拡大を被保険者が防止できるのであれば、それをしないで拡大させるのは保険者との関係で信義則違反であり、損害の防止は公益にも合致するとの説明がなされてきたのです。

損害防止義務は保険事故が発生してはじめて生じるもので、保険事故発生前に保険契約者等がこれを防止することができたのに、それをしなかった場合は保険法17条の免責の問題として処理されることになります。

そして保険法13条についても、17条(免責に関すること)とのバランスを保つ観点から、義務違反の要件として、「故意又は重過失」を要求する見解が当たり前になっています。

費用負担

保険契約者等が損害防止義務を履行した時には、損害の発生又は拡大の防止のために必要又は有益だった費用として、保険会社が負担するべきとなっています。(保険法23条1項2号等)

また、保険法16条には、「保険者は保険事故が発生していないときであっても、消火、避難その他の消防の活動のために必要な処置によって、保険の目的物に生じた損害をてん補しなければならない」と、損害てん補についての特則規定も設けられています。

今回の事例にあてはめて考えると

今回の事例における通風バリケード加工工事は、本件保険契約に規定されている具体例(上記のあらすじの1から3までの具体例)のどれにも該当しません。

また、本件工事は、本件火災により建物が全焼した後に行ったものであることなので、当該工事の時点で新たな損害の発生又は拡大を想定する事ができず、損害額も既に確定されていたものと評価せざるを得ないのです。

この様な状況からすれば、保険法13条・23条1項2号の範疇の問題として処理することはできないと考えられます。

また、本件工事が本件建物全焼後に行われていることからすれば、保険法16条の範疇の問題として処理する事も難しい状況です。

なお、今回の事例と同じ様な事案が裁判で争われた事があります。(対象事件:東京地裁平18(ワ)代8861号

その判例では、本件の様な通風バリケード加工工事は、保険契約の当該条項のいずれにも該当しないとして、損害防止費用の支払いを求める請求を棄却しています。

まとめ

今回取り上げた【損害防止義務】とは、火災が発生した時に、その火災の被害を拡大させないための消火活動に関与する一定の責務を保険契約者が負っているという事になります。

そして、【損害防止費用】は、消火活動に関わる最中に掛かった費用について保険会社に負担してもらえるというものになります。

そして、【損害防止義務違反】とは、火災が発生している、または発生しそうな状況なのに「保険契約者(被保険者)がその損害の発生や拡大を防止する行動が可能なのにそれをしなかった」場合、保険会社は火災保険金が免責になり、保険金がもらえなくなる可能性が高くなるという事になります。

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