
保険契約者が保険料を滞納している場合、その滞納保険料を支払えば保険休止の状態を解消できるかどうか?をテーマに解説させて頂きます。
保険休止状態を解消できるのか
約款においては、保険料分割払特約に関して、保険契約者は第2回以降の保険料を保険会社所定の払込期日までに払い込まれなければならないとしつつ、払込期日の属する月の翌月末までに保険料の払込みを怠った場合には、当該払込期日の翌日以後に生じた事故による損害については保険金を支払わない旨の規定が設けられています。
この時に、滞納していた保険料を支払うことによって、保険休止状態を解消することができるのかどうか?が論点です。
「保険休止状態」とは、上記の約款の内容が規定されている場合、分割保険料の不払いについて保険者の免責という効果を定めたものですが、この結果、保険者が保険金支払い義務を負わなくなった状態になります。
この状態の事を、保険休止状態といいます。
保険契約の効力はあるけど、保険者側が危険負担の責任を負わなくても良い状態のことです。
この件に関しては、下記の2点が問題になります。
- 保険契約者が滞納保険料(未払い分割保険料)を支払うことによって、いわゆる保険休止の状態を解消する事ができるのか?できるとしたら、どのような要件を満たさなければいけないのか?
- 保険料支払に伴う保険休止状態の解消についての立証責任は誰が負うのか?
休止状態の解消とその要件
まず、上記1.については、過去の判例では、当該保険休止状態が「生じた後においても、履行期が到来した未払い分割保険料の元本の全額に相当する金額が当該保険契約が終了する前に保険会社に対して支払われたときは、保険会社が、保険料支払い後に発生した保険事故については保険金支払い義務を負うことも定めているものと解釈すべきである」とされています。
つまり、未払だった履行期到来の分割保険料が支払われたときは、保険金払い義務の再発生を認めても公平(つりあいがとれている)であり、契約当事者の通常の意思に合致するものであるからです。
そして、保険休止状態の解消の要件としては、未払い分割保険料の元本全額の支払いであり、遅延損害金の支払いまで完了しなくても保険休止状態は解消されると解釈すべきとなっています。
休止状態の解消は誰が立証責任を負うのか?
次に上記2.について、過去の判例では「保険休止状態の発生による保険金支払義務の消滅を主張する者は、保険休止状態の発生時期及びそれ以後に保険事故が発生したことを主張、立証すべき責任を負い、保険休止状態の解消による保険金支払義務の再発生を主張する者は、保険休止状態の解消時期及びそれ以後に保険事故が発生したことを主張、立証すべき責任を負う」という判例があります。
要約すると、保険金支払義務が消滅している事は保険会社側に立証責任があり、逆に休止状態の解消を希望する保険契約者側には、保険休止状態の解消時期や、それ以後に事故が発生した事を立証する責任があるのです。
まとめ
保険約款では一般的に保険料の支払いを怠った場合には、一定の支払猶予期間を設けて、この期間内に保険料が支払われない場合には、保険事故が発生しても保険金を支払われない旨を定めています。
基本的に滞納している保険料を支払えば、保険休止状態は解消されます。
しかし、猶予期間内に保険料の支払いがない場合でも、契約者に責に帰する(法的に責任を取らなければならない)ことができない事由があるときには、保険者(保険会社側)が免責されないとするのが裁判所の立場になっています。
保険契約者に、保険料の支払いができない何かしらの理由(例えば突発的な火災、水災、津波で入院した場合等)で支払が滞ってしまったときには、保険会社側が常に免責になるとは限らないということです。