火災保険の評価基準

火災保険の評価基準には、具体的にどんな基準があり、どんな方法があるのか?をテーマに解説させて頂きます。

損害保険会社が、火災事故によって火災保険金を算出する際、建物の種類によって、それぞれどんな方法で評価額を出しているのかがお分かり頂けると思いますので、是非最後まで読んで頂ければ幸いです。

評価基準

おおまかに言うと、評価基準は、再調達価額と時価額の2種類があり、評価方法は、簡易評価と一般評価の2種類に分かれています。

そもそも評価とは、「その評価対象物について評価目的に適合した基準により、その価額を判定し、価額として表示すること」を意味します。

火災保険においては、保険の対象の評価額を算定することです。

評価が必要になる場面とは、要するに保険価額が幾らになるか?と知る必要がある場面のことで、具体的には保険契約時における保険金額の設定基準になると共に(保険価額以上の保険金額は、超過保険になります)、保険金支払時の上限金額となります。

評価基準、つまり保険価額の算定基準には、再調達価額時価額の2種類があります。

再調達価額は、「保険の対象となる財物と同等(同一の構造、質、用途、規模、型、能力)のものを契約時点で再築、または新たに取得するために必要な額のことである」と財団法人損害保険事業総合研究所の「火災保険論」の152ページに定義されています。

これに対し、時価基準の場合、「再調達価額から使用損耗および経年年数に応じた経年減価額を差し引いた金額」です。

これらの定義から明らかなのは、特に木造家屋で顕著になりますが、経年年数が十数年以上経過している家屋の場合、時価基準による保険価額は非常に低くなります。

例えば、国税庁「耐用年数(建物・建物附属設備)」の資料の中では、木造家屋の耐用年数は22年となっています。

国税庁「減価償却資産の償却率表」資料では、22年の定額法償却率は0.046なので、3000万円で新築した建物の1年間の減価償却費は、138万円になります。

したがって、新築から10年後に火災が発生したと仮定した場合、その簿価(帳簿に記入されている数値の純額)は、

3000万円-138万円×10年=1620万円

となります。

※なお、実際の評価は、上記の例と一致しないことも多いので、あくまで目安と考えて下さい。

火災保険金は、保険価額の限度でしか支払われないので、再び建て直すのに3000万円掛かる場合だとしても、時価基準の場合は上記の例で考えれば1620万円しか支払わず、火災保険金で建て直すことは困難となり、契約者保護に著しく欠けることになります。

そのため、家計分野の火災保険では、再調達価額基準が主流となっているのです。

評価方法

財団法人損害保険事業総合研究所の「火災保険論」の152ページには、評価方法についても記述があり、以下の様に書いてあります。

一般評価は専門的な個別の評価で、物件の複雑性や多様性など、個別性が高い企業分野の火災保険で使用するのに対し、簡易評価は、一般評価における評価方法を簡素化したものであり、専ら家計分野の火災保険で使用されている

※なお、その他に損害保険鑑定人による平場鑑定(ひらばかんてい)がある。
平場鑑定とは「工場やホテル・旅館等の大規模物件等を対象に、損害保険会社の委託を受けて損害保険鑑定人が保険価額を評価する鑑定方法。損害額の鑑定ではないため、【平場鑑定】と呼ばれる。

工場見取り図(平面図)、固定資産台帳、建築図面等をもとに、詳細な調査を行うため、簡易評価・一般評価よりもはるかに精度の高い評価となる」

そこで、次の項目では、簡易評価について、財団法人損害保険事業総合研究所の「火災保険論」に基づいて解説してみたいと思います。

※ただし、簡易評価の方法は、各損害保険会社で差異があり、評価システムも非公開になっているので、これから説明する事は、参考程度に理解していただけたらと思います。

簡易評価の使用方法

簡易評価の使用方法は、建物家財で異なり、建物については、簡易評価で保険目的物の再調達価額を算出し、その価額で保険金額を設定します。

家財については、世帯主の年齢・家族構成基準又は建物の所有形態・専有面積基準で家財の再調達価額を算出し、その金額内で保険金額を設定します。

①:建物

建物は、戸建住宅とマンションとで評価方法が違います。

まず、戸建住宅については、新築とそれ以外の2種類の評価方法があります。

新築建物の場合

再調達価額(評価額)の計算式は、建物の建築価額で算出します。

新築ではない建物の場合

新築ではない建物の場合は、【建築年・建築時の建築価額が分かっている場合】と【建築費用が分からない場合】で評価方法が異なります。

建築年や建築時の価額が分かっている場合は、【年次別指数法】という方法で、

建築時における建築価額×年次別指数法×基礎区分

で行い、もし建築費用が分からない場合は、【新築時単価法】という方法で、

1㎡あたりの新築費単価×面積(㎡)×基礎区分

で計算します。

年次別指数法とは、現在の建築価額が建築当時と比べて、どの程度変動しているかを倍率で示した数値で、建築年と構造級別によって評価されます。

基礎区分は、基礎を保険の対象に含むか否かの区分で、含まない場合は5%程度減額します。

1㎡あたりの新築費単価は、都道府県、構造級別の区別に加えて、一戸建住宅か区分所有建物(マンションなど)であるかによって違い、戸建ての場合は門、塀、物置を含みます。

ただし、いずれもシステムに組み込まれた数値であり、帳票(支払伝票や収納伝票などの「伝票類」の総称)として公開されていないので、「このような概念がある」程度の理解で十分だと思います。

②:マンション

マンションの場合、新築費単価法分譲価額を基礎にする方法があります。

新築費単価法は、分譲価額等が分からない場合に用いられる方法です。

算定式は次のとおりです。

再調達価額=新築費単価・区分所有建物(専有部分)×専有面積(㎡)

分譲価額を基礎にする方法は、マンションは敷地利用権が一体となって販売されるので、敷地利用権の価額を控除する必要があります。

これは、中古不動産の売却時などでも問題となるのですが、敷地利用権には消費税が掛からないので、消費税額から敷地利用権と建物の価額を割り出す事ができます。

算定式は次のとおりです。

建物(専有部分と共用部分の共有持ち分)の価額(除く消費税)=購入時の消費税額÷購入時の消費税率

以上が評価方法のご紹介になります。

この評価方法を使う事で、販売時の建物の価額がわかるので、これに年次別指数表の係数を乗じて算出することになっています。

※ここでいう建物の価額は、専有部分と共用部分の共有持分を合わせたものなので、保険の対象を専有部分のみにする場合は、専有部分の面積の表示方法に応じて、「上塗基準は40%」、「壁芯基準は60%」を、建物の価額に乗じる必要があります。

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