火災保険の重複契約

例えば、火災保険契約者がA社以外にもB社との間で火災保険契約を重複して契約した場合、約款上では告知義務が課されていることから、当該保険契約の効力はどのようになるか?または保険者(損害保険会社)は免責になる可能性はあるのか?を解説させて頂きます。

法的な解釈はこうなっています

保険契約者が重複保険を締結した場合でも、保険者は、てん補損害額の全額(被害総額)について給付義務を負い、重複保険の各保険契約の保険給付合計額が、てん補損害額を超える場合において、自己の負担部分を超えて保険給付を行って共同の免責を得たときは、自己の負担額を超える部分に限り、他の保険者(保険会社)に対して求償権を取得する事になります。(保険法20条)

ただし、保険者は、保険契約者が不法に保険金を得る目的をもって重複保険契約をしたことなど、保険契約解除あるいは保険金支払拒絶につき正当事由がある場合に限り、告知義務違反を理由に契約解除あるいは支払拒絶することができると考えるべきである(保険法30条・31条等)

1.保険契約の重複

重複保険とは、同一の保険の目的について、保険事故、保険期間を同一にする複数の損害保険が存在し、その保険金額の合計額が保険価額を超過する場合をいいます。

具体的な要件としては、以下の4つがあります。

  1. 保険の目的物、被保険者、被保険利益を同一とする数個の保険契約が存在すること
  2. 数個の保険契約が保険事故を同じくすること
  3. 数個の保険契約で保険期間を共通にする部分があること
  4. 数個の保険契約の保険金額の合計が保険価額(てん補損害額)を超過すること

例えば、契約者が保険価額3000万円の建物について、A社が保険金額3000万円、B社が1500万円の火災保険契約を締結し、火災によって1800万円分の損害が生じ、A社が1800万円の保険金を支払った場合、最終的負担割合はA社1200万円、B社が600万円となり、A社はB社に対しても差額の600万円の求償権(支払った保険金が1800万円が1200万円になったという意味)を有する事になります。(保険法20条2項

このケースではA社とB社の火災保険契約の比率が2対1(3000万円対1500万円)なので、その比率に応じた金額をそれぞれ支払ったことになるわけです。

2.重複保険の契約の効力

生命保険との違いは?

生命保険契約や傷害疾病定額保険契約においては、保険契約の重複により保険金額の著しい重複が生じる事により、保険金詐取等のモラル事案の推認となる事実が構成しやすいことから、当該事実(保険金額の著しい重複が判明する)だけで解除事由と認める事が出来るとされています。

実務上でも、保険金額が著しく累積することになるような保険の引受は拒絶されていて、保険契約者側が他保険の存在や申込みの事実を保険者に意図的に秘密にしている事が多いです。

これに対して損害保険契約においては、実損てん補(実害の金額だけを補償する)を目的とする契約なので、下記の判例のとおり、重複保険という事実のみだけで解除を認める事は難しいのが現状です。

判例の紹介

上記の点を巡る判例としては、いずれも保険法制定前のものになってしまいますが、以下の様なケースに限って重複保険契約の解除が認められています。

  1. 保険契約者が不法に保険金を得る目的をもって重複保険契約をした場合
  2. 保険者が重複保険契約の事実の通知を受領していたとすれば、危険の増加測定が可能であったのに、通知欠如のため危険変動を測定する機会が得られなかった場合
  3. 共済契約者が重複共済契約などの存在を知り、かつそれが告知事項であることを認識していた、又は重大な過失により認識していなかった場合で、諸般の事情から道徳的危険の存在が異なる漠然たる不安の程度を越えて、ある程度具体的に推認される場合

※判例に使用される言葉なので、少し分かりづらいかもしれませんが、ご了承下さい。

3.解除の効力発生時

保険会社の約款では、解除の効力発生時について、保険者は将来に向かって解除することが可能としつつ、保険金支払事由の発生後でも解除することができ、この場合には保険金を支払わず、既に保険金を支払っていたときは、その返還を請求する事ができると規定されているケースが多いです。

解除の効力発生時期と関連して、解除による保険契約関係の清算も問題になりますが、①解除の効力発生時までの既経過保険期間に対する保険料の払い戻しはなされない一方、②未経過保険期間については、約款上、解約返戻金を払い戻す旨が規定されています。

まとめ

火災保険(損害保険)においては、重複で契約しても実害額以上の保険金が貰えるわけではないので、重複で契約すること自体が意味の無い事だといえます。

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