故意免責規定

今回は、火災保険の契約者以外の人による【建物への放火】について、保険会社の免責が認められた事例をご紹介します。

どのようなケースだと、保険金が支払われないのか?の参考になる事例のひとつとなります。

裁判までのあらすじ

今回は、実質的な保険契約者が、その建物に放火したと推認された事案について、裁判所が保険会社に対して免責を認めた事例になります。

まずは、裁判を提起した原告側(保険契約者側)の陳述書を参考にしながら、あらすじを下記にご紹介します。

私(A)と兄(B)の父親であるXは、自分の所有する店舗兼住宅について、Y保険会社と店舗総合保険契約(火災保険)を締結し、更新を重ねていた。

B(兄)は、平成16年9月頃からX(父親)と同居を開始し、Y社との間で平成16年10月21日に締結された契約更新手続きには同席していたほか、平成17年9月29日の更新の際には、既にXには認知症の症状が現れていたことから、実際に契約更新の申込み手続きを行うようになっていた。

平成17年12月25日、本件店舗(スナック)から火災が発生し、本件建物及びその内部の什器等が全焼するに至った。

そこで、Xが火災直後に亡くなったことから、BがY社に対して保険金の支払いを求めたところ、Y社はこれに応じず、Bもその後亡くなったことから、私(A)が保険金請求訴訟を提起した。

Y社は、本件火災が実質的な保険契約者及び被保険者であるBの故意によって生じたものであり、免責されると主張している。

本件火災がBの故意により招致されたものであることについて争いがなかったとして、今回の場合にも故意免責規定が適用されるのか?

解説

今回の問題は、形式的には約款所定の「保険契約者、被保険者、又はこれらの者の法定代理人」でない者の関与により火災が生じた場合、すなわち本件のB(兄)の様に実質的に保険契約者と評価し得る者のほか、実質的に被保険者と評価し得る者、被保険者に代わって物件を管理していた者等によって火災が生じた場合には、免責規定の適用があるのかどうか?です。

結論から申し上げると、今回の事例では、免責規定が適用されました。

次にもう少し詳しく解説していきます。

1.問題の所在

火災保険契約の種類は様々なものがあり、各々に普通保険約款がありますが、その全ての約款において、「保険契約者又は被保険者の故意、もしくは重過失又は法令違反によって生じた損害に対しては保険金を支払わない」という免責事由が規定されています。

そこで本件のように、形式的には保険契約者又は被保険者以外の故意・重過失により火災が発生した場合にも、同様に免責されるのかどうか、免責規定の趣旨とも関連しつつ、問題となります。

2.学説・判例の紹介

学説の面からは、実質上の保険契約者又は被保険者による事故招致が免責事由に該当することを肯定する見解や、ドイツ法の代表者責任論に基づいて、保険契約者間の公平の見地から、被保険者に代わり保険の目的物を事実上管理する地位にある者による事故招致も保険者免責とする見解が存在しています。

過去の他の同じ様な判例を分析すると、以下の3点の判例趣旨が存在しています。

  1. 形式的には保険契約者ではないが、保険契約者と同様に振る舞い、実質的な保険契約者と評価し得る者による事故招致であることから免責されるとする
  2. 事故招致者が、保険金給付に実質的な利害関係を有していて、実質的被保険者と評価できることから免責されるとする
  3. 被保険者に代わって物件を管理していた者による事故招致であることから免責されるとする

要するに、契約者側の関係者(法的な契約者ではないけど、その契約者を介護していたりしている人)が原因としての事故の場合も、基本的には保険会社は免責される事が多いという法的判断が下されているという事になります。

3.本件に関連する判例の紹介

本件の同様の事案について、判例(詳しくは判例タイムズで詳細を閲覧頂けます。)では、理論的根拠は明示していないですが、以下のとうり判示がされました。

「Xが本件各保険契約の当事者であるが、その申込手続きをしたのはBであり、当時、Bは本件建物においてXの面倒を見るためにXと同居していたのであるし、Xに認知症の症状が現れていたこともあって、本件建物の管理を含め、Bが家計を管理していたことが明らかであるから、このような事情の下においては、Bの故意によって損害が生じた場合であっても、本件各保険契約約款における故意免責規定の適用があるというべきである。」

まとめ

今回の事案のB(同居していた兄)のように、「実質的に保険契約者と評価し得る者のほか、実質的に被保険者と評価し得る者、被保険者に代わって物件を管理していた者等」によって火災が生じた場合には、Bの放火への関与を裏付ける様々な間接事情を総合的に考慮したうえで、場合によっては免責規定の適用を認めるべきという流れになっているのが、今の世の中の流れです。

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