譲渡による火災保険の効力は?

もし保険の目的物を譲渡した時、今まで契約していた火災保険の効力はちゃんと引き継がれるのか?をテーマに解説させて頂きます。

保険法には解除要件が書いてある

まずは保険法に書いてある解除要件を理解することから始めてみます。

保険契約の締結後に危険増加告知事項についての危険が高くなり、保険契約で定められている保険料が当該危険を計算の基礎として算出される保険料に不足する状態になること)が生じた場合には、保険料を当該危険増加に対応した額に変更すれば保険契約を継続することができる場合であっても、保険者は以下の要件を満たす場合には契約を解除できることが保険法の29条に定められています。

  1. 当該危険増加に係る告知事項について、その内容に変更が生じたときは、保険契約者又は被保険者が保険者に遅滞なく通知をすべき約款が定められていること
  2. 保険契約者又は被保険者が故意又は重大な過失により遅滞なく、上記1.の通知を保険者にしなかったとき

つまり、約款には「告知すべき内容が変更した場合は、損害保険会社に迅速に通知し、もし故意や過失によって通知をしなかったときに保険会社は契約を解除できる」と規定されているという事です。

詳細な解説

①:火災保険における代表的な約款の定め

保険法における危険増加による解除についての規定は、上記の説明のとおりです。

そして、保険法施行後の火災保険に関する約款では以下の規定があります。

  1. 保険契約者又は被保険者は、保険契約成立後、保険の目的物を譲渡する場合には、遅滞なく保険者に通知しなければならないこと
  2. 上記1.の場合には、あらかじめ保険者の承認を請求しなければならないこと
  3. 保険者が、上記2.の承認をする場合には、2.の権利及び義務は、保険の目的物が譲渡された時に、保険の目的物の譲受人に移転すること

保険の目的物が移転した場合には、被保険利益の帰属主体という保険契約の最も重大な要素が変わるので、保険契約は終了させることも考えられます。

しかし、既に存在している保険契約による権利保護が、目的物の移転後も自動的に及ぶのであれば、譲受人にとっては新規の契約をする手間が省略できて、付保漏れのリスクも回避できます。

また、保険者としても顧客関係を維持できるので、上記の保険法の規定、及びこれを受けた保険契約の約款に規定されている限りにおいて、契約が継続される事になります。

②:保険法施行前の判例の紹介

保険法施行前の判例として、保険の対象を譲渡する場合の事前の通知義務を規定した約款の有効性を認め、火災の発生が建物譲渡の2日後だった場合には、保険契約者等が遅滞なく通知義務を履行しなかったとは断定できないので、保険会社の免責が認められずに、保険金の支払い責任を認めた判例も過去にありました。

結論

現在では、保険の目的物を譲渡しようとした場合、迅速に損害保険会社に譲渡する事の承認を事前に請求し、承認後に譲渡する旨を通知すれば、所有者が変わったとしても保険契約は継続されます。

ただし、保険会社に譲渡の承認請求をしなかったり、または忘れたりした場合、その後に保険事故が発生しても、保険契約が継続していない状態となり、保険金が支払われない可能性が高いので、絶対に気をつけて下さい。

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