【超過保険】と【一部保険】の特徴と違い

保険用語の【超過保険】と【一部保険】の特徴と違いを徹底解説します!

最初に覚えておいて欲しいのは、超過保険とは、「保険価額<保険金額」で、一部保険とは「保険価額>保険金額」の事を意味します。

これからこの保険価額保険金額をはじめ、全部保険超過保険一部保険についてそれぞれ解説させて頂きます。

保険価額と保険金額

一部保険は、単純なようで保険価額及び保険金額の概念が絡むので、損害保険の中でも理解が難しい問題のひとつです。

基本概念から順を追って解説していきます。

保険価額とは、保険法上、「保険の目的物の価額」を意味し、学問上は「被保険利益の評価額」を指します。

火災保険においては、保険の対象である建物等の時価額という趣旨となります。

損害保険の本質は、「損害てん補」なので、被保険者が損害保険金によって被った損害以上の利益を受けるべきではない事(利得禁止の原則)から、保険価額が保険金支払の上限となります。

次に、保険金額とは、「保険給付の限度額として損害保険契約で定めるもの」(保険法が6条1項6号)をいいます。

保険価額が保険金支払の上限額なので、「保険価額=保険金支払額」として理解しておけばよく、【保険金支払の上限額】と【保険金額】とを分ける必要性は、一見すると不要なようにも思えます。

しかし、賠償責任保険のように、損害賠償責任を負担するという「損害を回避する」という意味での被保険利益はありますが、その評価額を明確化することはできず、保険価額がない保険があります。

保険金額の概念が無い場合は、全ての賠償責任保険の支払上限が無制限となりますが、これでは極めて低い確率で起こるが、極めて多額の損害が発生する場合例えば、ピカソの絵画を誤ってクシャクシャにしてゴミ箱に捨てる等)も保険者は無制限に損害保険金の支払義務を負う結果、保険料が高額となって加入の合理性を失ってしまいます。

そのために、保険価額とは別に損害保険金の上限額を定める必要があり、例えば個人賠償責任保険では、保険金額を1億円と設定しているものが多くあります。

これに対し、個人向け自動車保険の任意保険は、被害者保護の観点から、対人賠償は無制限となっています。

もっとも、保険価額による規律が行われる物保険では、保険金額の概念は不要かとも思えますが、あえて保険価額よりも少ない保険金額を望む保険契約者もいるので(保険金額が小さければ保険料も少ないから)、保険価額とは別に保険金額という概念が必要なのです。

保険価額と保険金額の関係は、以下のとおりに整理できます。

  1. 保険価額=保険金額・・・・・全部保険
  2. 保険価額<保険金額・・・・・超過保険
  3. 保険価額>保険金額・・・・・一部保険

全部保険

保険価額と保険金額が一致する状態を全部保険といいます。

保険価額・保険金額は、いずれも保険金支払の上限額を分ける基準なので、この2つの基準が一致する全部保険では、損害の状況に応じて保険金が支払われれば足りることになります。

超過保険

超過保険は、「保険価額<保険金額」の意味です。

通常は、損害保険契約締結時の問題が議論されますが、保険期間中に超過保険になることもあります。

損害保険契約締結時に「保険価額<保険金額」である場合、保険金額分の保険料を支払ってるのに、保険金額より低い保険価額基準の保険金しか受け取ることができないことから、保険契約者は保険料を過払いしていることになります。

そのため、保険法9条は、「保険契約者及び被保険者が善意で、かつ重大な過失がなかったときは、保険契約者はその超過部分について、当該損害保険契約を取り消すことができる。」と規定しています。

保険契約者に取消権を認めただけで、無効としなかったのは、狂乱物価の時代1970年代半ばに起きた日本国内の異常な物価高騰)等では、最初の損害保険契約締結時の段階では超過保険だったのが、保険価額がインフレで上昇し、いつの間にか「全部保険もしくは一部保険」になる事も有り得るので、損害保険契約締結後に保険契約者が超過保険に気が付いても損害保険を生かすオプションを認めるという趣旨で無効にはならないようになっています。

逆に当初は「全部保険・一部保険」だったのが、建物が老朽化したために、いつの間にか超過保険になる場合も有り得ます。

これに対する救済策として、保険法10条に、「損害保険契約の締結後に保険価額が著しく減少したときは、保険契約者は、保険者に対し、将来に向かって、保険金額又は約定保険価額については減少後の保険価額に至るまでの減額を、保険料についてはその減額後の保険金額に対応する保険料に至るまでの減額をそれぞれ請求することができる」と規定しています。

なお、保険法9条は、「ただし、保険価額について約定した一定の価額があるときは、この限りでない。」と規定していて、評価済保険の場合は、取り消しが認められていません。

一部保険

一部保険とは、「保険価額>保険金額」の事を意味します。

一部保険は、保険料節約のため意図的に生ずる場合もあるし、インフレで保険の対象の価値が上昇し、結果として一部保険になってしまう場合もあります。

一部保険である場合の保険金の支払いについて、保険法19条では、「保険金額が保険価額に満たないときは、保険者が行うべき保険給付の額は、当該保険金額の当該保険価額に対する割合を、てん補損害額に乗じて得た額とする」と規定しています。

この事を、別名で比例払とも言います。

これを計算式で表現すると、以下の様な式になります。

保険給付の額=てん補損害額×保険金額÷保険価額

なお、一般的に、「AのBに対する割合」というのは、Aが分子でBが分母のことで、A÷Bの趣旨になります。

計算式を事例に当てはめてみると

例えば保険金額500万円、保険の対象を時価1000万円の建物とする時価の火災保険において、この建物が全焼した場合を考えると以下の式になります。

保険給付の額=てん補損害額1000万円×保険金額500万円÷保険価額1000万円=500万円

この事例だと、「保険金額=保険給付の額」なので特に問題が無いように思えますが、上記の事例で全焼ではなく修理費相当額が250万円だった場合の事例だと以下の様になります。

保険給付の額=てん補損害額250万円×保険金額500万円÷保険価額1000万円=125万円

こうなると、保険金額以下なので、てん補損害額250万円が支払われて当然との被保険者の思いに反する結果になってしまいます。

このような比例払を回避する方法は主に2つあり、ひとつは保険契約時に保険価額を固定する方法、もうひとつは、保険法19条が任意規定であることから、比例払を修正して実損払にする方法があります。

例えば、損保ジャパンの個人用火災総合保険は、「新価・実損払」と、「時価・比例払」の火災保険を販売していますが、「新価・実損払」は上記の各方法を取って比例払を回避しようとした商品になっています。

まとめ

損害保険の実務というのは、単純なようで難しい面もあります。

少し解説が難しかった部分もあったと思いますが、全部保険超過保険一部保険の違いが大体お分かり頂けたらOKだと思います。

何回か読み返して頂けると、理解もより深まるのではないかと思いますので、お時間のある方は何度か読み返して、それぞれの特徴をより深く理解してみて下さい!

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