自宅の火事の消火活動への参加

もし自宅で火事が起きた場合、消火活動を行わないと、約款規定の違反に該当するのかどうか?をテーマに解説させて頂きます。

自宅が火災で延焼中だとしても、消火活動になんからの形で貢献していないと、約款規定に違反していると解釈されてしまう事もあるようなので、知識として覚えておいて欲しいです。

約款にも、消火活動に努める必要性が書いてある

保険法の13条には、「保険契約者及び被保険者は、保険事故が発生したことを知ったときは、これによる損害の発生及び拡大の防止に努めなければならない」と規定されています。

保険約款においても、例えば東京海上日動火災保険の約款の2章3節1条にも、「保険契約者または被保険者は、事故または損害が発生したことを知った場合は、下表の右欄のこと(損害の発生や拡大の防止)を履行しなければなりません」と書いてある部分があります。

この様な義務は、免責条項と関連している事が重要で、東京海上日動火災保険の約款の他の部分にも、「保険契約者または被保険者が、正当な理由がなくて上記の第1条(事故発生時または損害発生時の義務)の規定に違反した場合は、当会社は一部の保険金を差し引いて保険金を支払います。」と書いてあります。

つまり、「保険契約者が火災事故が発生した時には、一定の消火活動をしてくださいね。そうしないと保険金を全額は支払いませんよ。」と保険会社側が考えて、それを約款規定(損害防止義務)にしているのです。

問題点

そこで問題になるのが、損害防止義務の程度です。

損害防止義務の趣旨については、2017年に発行された「ポイントレクチャー保険法第2版」の89ページに、「損害防止義務は、保険事故が発生したにもかかわらず、保険があることを理由として、被保険者が何らかの行動もとらないことによって、損害が拡大するのを防止するところに目的がある。簡単な消火活動によって火が消し止められるのに、火災保険があることから、何も消火活動も行わない例が考えられる」と説明しています。

本来、ぼやで終わるべき火事で、自宅に消化器がある場合等は、損害防止義務違反を問うことができると思います。

もっとも、保険法13条及び上記の約款の規定(拡大と防止に努めなければならない)から、損害防止義務は努力義務と解釈されるので、火災に関していえば、その義務はいわゆる初期消火にしか及びないし、その程度は初期消火の努力をすれば義務の履行としては十分と考えられています。

また、高齢者や障がい者等、初期消火だとしても危険性がある人には義務の履行も不要になります。

また、一般に初期消火は天井に火が回るまでが限界とされていますが、一般の人が天井に火が回っているかどうかを判断するのは難しく、事後的に、初期消火の可否を認定するのは困難です。

初期消火の段階を過ぎている場合には、初期消火の努力をしなくても損害防止義務違反を問われる事はないので、火災保険において損害防止義務違反によって保険会社が免責になる事案は基本的に少なく、実務上はモラルリスク防止の理念的な義務に過ぎないと考えられています。

なお、損害防止義務は、保険法13条に「保険事故発生後に保険事故の発生を知ったときから発生する義務」となっていて、「保険事故発生前の損害防止義務は、故意・重過失による事故招致の問題として理解され、免責の問題に発展する。」と考えられます。

まとめ

今回のテーマは、「自宅で火災が起きたら必ず消火活動に参加しなければいけないのかどうか」でしたが、結論を申し上げると、「火災発生の初期段階において消火活動(消火に努めること)に関与すればよく、結果的に火が燃え広がってしまったとしても、命の危険を高めてまで消火活動をしなければいけないわけではない」という事になります。

※今回のテーマに出てくる【損害防止義務】については、下記コンテンツでも解説しています。

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